『米原万里の「愛の法則」』集英社新書

米原万里の最晩年の講演をまとめたもの。晩年に書かれた文章の方では、政治的な部分での一種の絶望感のようなものが噴出していたが、この講演集ではそのようなこともなく、「いつも」の米原万里の姿が楽しめる。

  • 第一章 愛の法則
  • 第二章 国際化とグローバリゼーションのあいだ
  • 第三章 理解と誤解のあいだ−通訳の限界と可能性
  • 第四章 通訳と翻訳の違い

という米原万里のエッセンスを集めたような、いかにもという構成で、口述ということもあり非常に読みやすく、米原万里の良い入門書*1という感じがする。



画竜点睛を欠くのは巻頭に載せられた池田清彦による『本書に寄せて』と題して書かれた文章。その後の講演で使用されるギャグをそのまんま使用するなど、ネタばれの嵐で、とても巻頭におくことを前提として書かれた文章とは思えない。

巻頭言を依頼されてこのようなものをかいた池田清彦が馬鹿なのか、このようなものを巻頭においた編集者が馬鹿なのか。まったく呆れたものである。

米原万里の「愛の法則」 (集英社新書 406F)

米原万里の「愛の法則」 (集英社新書 406F)

*1:「エッセイ」に「入門」というのは変かw