『女王陛下の英語』倉田保雄
イギリスの英語について書いた本。1994年の本だから、生もの的記述は少々傷みかけているかもしれない。
ともあれ、小ネタの備忘メモ。この本には他にも色々なリストがあったりするので、手元にあっても良いかも知れぬ。
⇒小ネタ
(成り上がるに際しての)障害はregional accentだが、だからといって全部が全部だめだというのではないというのだからややこしい。たとえばTyneside Geordie accent (Newcastle accent)とかエジンバラのMorningside accentなどは無害だが、CockneyはじめScouse、Brum、Belfast、およびGlasgowなどのローカル・アクセントは有害そのものだそうだ。そして、その中間にあるのがWelsh、Lancashire、Irishアクセントである。
アイデアの便秘と言葉の下痢(constipation of idas and diarrhea of words)
チェルシーに行くと、「ワールズ・エンド」(World’s End=世界の果て)というパブがある。
エレファント・アンド・カースル(Elephant and Castle)の名前の由来。
そのむかし、パブのある一帯はスペイン王「アルフォンソ・デ・カスティーヨ」の別荘があった。住民たちは一生懸命、原音に近い発音をするよう努力したが、生来、外国人、外国語嫌いのコックニー連中のことだから、日が経つにしたがって、みんな自分流に読みはじめた。
そうこうするうちに、だれかが、「エレファント・アンド・カースル」でいいじゃないかと言いだすと、それがバカ受けして、スペイン王アルフォンソ・デ・カスティーヨはあっという間に「エレファント・アンド・カースル」と“改名”させられてしまい、それがそのまま地名となり今日に至っているのだ
なんつーいい加減な(笑)
⇒英国英語は裏読みが必要として、実例を挙げる。
We must keep in touch! Please come and have tea with us one day.
別れの挨拶の決まり文句。本気にしてはいけない。
I wouldn’t say no.
= Yes, of course. 何か欲しいかと聞いてこう回答がきたら、「非常に欲しがっている」と解すべき。
Well, yes.
文句なしの「ノー」ととってよい。
I only wish I could.
= I am rather glad I can’t. 「ああ*1助かった」に相当。
I see your point.
= Go on. ただの催促の文句であり、立場に同意するかどうかとは無関係。逆に「I never quite see the point of …」と来たら「I don’t like it.」気に食わないという意味。
Fair enouth.
ただの相槌。「ああ、そうか」「よし、わかった」程度の意味。
As you know…
「あなたはご存じないでしょうけど」の意味になる。
I hear that…
実際には「私はもう言いふらしていますよ」という一種の警告。*2
I can’t afford it.
「とても手が出ない」ということは「買えます」ということ。戦後はロンドンの有閑マダムの間でこの台詞が流行しているとあるが。
I have a couple of cockney friends.
下層階級にも友達がいる、つまり「私は毛並みが悪くない」ということで、オックスブリッジ連中が良く使うきざな台詞。
If you don’t mind me saying so.
額面どおりなら「もしお差し支えなければ言わせていただきますが」だが、実際には売り言葉に買い言葉的含み。「お言葉ですが…」というニュアンス。
まあ、日本人の特に京都などの出身ならば、このあたりの感覚はむしろ一致していたりして。わたしゃとてもだめだが。
⇒故エリザベス皇太后の、そして現イギリス王室の人気の源。
皇后はときに国王と一緒に、ときには単独でロンドンに被爆地−主として庶民が住むイースト・エンド地区だった−をマメに見舞って歩き、コックニーの被災者たちに励ましの声をかけられた。
ヒトラーはイースト・エンドを徹底的に爆撃して、下町のコックニーたちを焼き出してしまえば、王室に対する不満が爆発して、うまくいけば革命が起こるだろうと期待していたのだが、コックニーは逆境に立つと滅法、強さを発揮するので、爆撃はかえって裏目に出たのだ。
その強さの源はユーモアで、彼らは空襲で焼き出されると、順番に焼け出されたのを祝って酒盛りをしたり、つぎの被災建物についてカケをしたりしていたという。とにかく、焼け跡に、その焼け具合に応じて、“rare” “medium” “well-done”などという札を立てて笑い合ったりしていたとあって、アメリカ人記者などは、「頭がおかしくなったのではないか」といった記事を送っていたそうだが、無理もない。
⇒市民権を得た?S-wordsのリスト
一般化している
hell, hell’s bells
damn/damned
obscenity
Crist
Godawful
条件付(女性のいない場合など)
shit
buggard, buggard off (消えろ)
balls
bollocks*3
bitch
fuck, fuck awful (ひでえ)
fuck off (消えろ)
⇒英語と米語
アメリカン・アクセントはどちらかというと、社交場はマイナス要素である。
英国以外のヨーロッパでは、英語といえば本家の英語がほんもので、米語となると明らかにうさんくさい扱いを受けているのである。
世界の英語の80パーセントは本家英語である。分家英語、とくにアメリカン・アクセントがまかり通るのは、北米、日本、フィリピンぐらいなもので、あとはほとんどがクィーンズ・イングリッシュである。最近、中国にアメリカン・イングリッシュがかなり浸透しているようだが、旧ソ連、東欧ではアメリカン・イングリッシュは格が落ちる。
⇒チャールズは自己主張し行動するプリンス
70年代の終わりからチャールズの発言が注目を集め始め、80年代末から90年代にかけては「物議をかもす皇太子」(Controversial Crown Prince)。その発言はむしろ左翼的で、政府が「保守」で王室が「左翼」という状況。また、近代建築批判・十字軍活動など。日本のダイアナに対するひいきの引き倒し的報道からのチャールズとは異なる。
- 作者: 倉田保雄
- 出版社/メーカー: 講談社
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