『ミス・ポター』★★★★☆
ピータ・ラビットなどで知られるベアトリクス・ポターの伝記映画。主役のポターにはレニー・ゼルウィガー。「変人」を演じさせるとぴか一だね、全く。*1
もともと興味ある物語を作った、興味ある人物の、興味ある地域(湖水地方)を舞台にした映画であるだけに、面白くないはずがないのだが、その分基準の方も上がってしまったのか、テーマの置き方に少し違和感があった。
事前に大まかな内容を知ったときには、もっとナショナル・トラストに重きを置いた作品なのかと思ったのだが、実際にはほとんど触れられないまま終わった。それどころか、映画の描き方では、大げさに言えば、世間知らずのお嬢さんが道楽のために開発を邪魔していたようにすら受け止められかねないように思う*2。ポターとナショナル・トラストの関わりの物語も、面白いと思うんだがなあ。
実際のところ、テーマを絞ってうまくまとめているとは思うのだが、1時間30分程度でここまで綺麗にまとめられるんなら、+30分程度で描ける分だけでも、もう一歩踏み込んで欲しかった気がする。
あと、観光誘致の視点からすると、描かれる景色もそれなりに綺麗なんだが、せっかくの湖水地方も、初夏のものも含めて秋みたいな感じで、なんか物足りない。少なくとももうちょっとくらいは「緑」じゃなかったかなあ。
この映画で、どれだけ湖水地方に客を呼べるかなあ、と思った。
いろいろと文句も言ったが、全体としては面白い映画ではあった。20世紀初頭の英国における階級社会の有り様みたいなものもうまく描かれているんじゃないかと思う。細かいところでは、お父さんが「リフォーム・クラブ」の一員だったりとか。悪名高きなっちの字幕であったが、このあたりにきっちり字幕をつけてあるあたり、彼女の本業が伺える*3。功なり名を遂げたのだから、いい加減スターウォーズとかに手を出さず、こういう映画ばかり扱っていればいいのに。
紹介は洋書の小説版。以前衝動買いしてしまった本。未読w
Miss Potter: The Novel (Peter Rabbit)
- 作者: Richard Maltby Jr.
- 出版社/メーカー: Warne
- 発売日: 2006/12/28
- メディア: ペーパーバック
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■レニー・ゼルウィガー
しかしこの人もすっかりイギリス映画づいちゃったなあ。発音のほうも、私程度の耳にはかなりbritishに聞こえる。大声で“can't"というシーンでも「カーント」と響いてたし。
■この映画サイトがすごい!
非常に詳しく、また評が的確で面白い。『まどぎわ通信 - 映画「ミス・ポター」』
申し訳ないけど、引用させてもらう。なお、自分の興味のあるところだけを抜き出したので、的確な引用ではない。
「ブリジット・ジョーンズの日記」で英語を鍛えたとは言っても,少女時代を演じているルーシー・ボイントンほどの英語でなく,あくまでイギリス風アクセントの米語だ.
へへ(^^;)
本当は勤勉と禁欲と貞操に彩られたヴィクトリア時代後に訪れたエドワード時代の独特の開放感の中,それでもヴィクトリア時代の価値観を色濃く引きずる旧時代の怪物的な両親に反発し,自らの道を切り開いた女性の生き様を描くだけでも面白かったはず.しかもこれに恋愛譚を絡めれば本来は一波乱も二波乱もある展開になるはずなのだが,特に大きな盛り上がりもなく静かに終わっていく.価値観の対立が思ったよりも前に出てこないのだ.また身分を超えた純愛であるノーマン・ウォーンとの恋愛も盛り上がらず,かといって後半のナショナル・トラストに関わる場面も妙に中途半端だ.
やっぱりナショナル・トラストがらみはえらく中途半端だよね。
しかしそのような強引な展開と名前だけの脇役陣の割に,この小品には妙に惹かれる持ち味がある.非常に薄味で大傑作とは言えないものの,テーマ曲として流れる"When You taught me how to dance" の暖かくゆっくりとした雰囲気と同様に,映画を観た後の印象は何とも心暖まるものだ.
ほんと、わかる。ツレはどっちかというと違和感の方が大きかったようなのだけど、私にはいくつかの難点以上に好印象が残ったのだ。いっぱい星をつけちゃったように。不思議な映画だ。