八切止夫「八切意外史 信長殺し、光秀ではない」(ザウルスセレクト文庫)

歴史上の定説に異議を唱える作品らしく、Space Townのサイトで「八切の前に八切なく、八切の後に八切なし――戦後の歴史小説界で異彩を放った伝説の奇才・八切止夫。」だかなんだか妙な文句を付けて大きく宣伝してあった。テーマ的にも標記の物以外に上杉謙信女性説や家康複数人説等を唱えているようで、興味を持ってとりあえず一冊購入してみた。

簡単に言えば、信長が、自らを神になぞらえはじめた(信長公記に記述あり)という宗教上の理由に加え、マカオの攻略を考慮に入れはじめた(推測)という現実的な理由から、スペイン(ポルトガル)人によって(もしくはスペインから提供された高性能爆薬(推測)によって)殺されたとする説。

確かに視点としては面白い部分はある。しかし、独りよがりで回りくどい文章、ドキュメンタリー風にしようとしているのだろうが唐突に始まる私小説風のストーリー、そしてその中に散りばめられた恨み節にはほとほとうんざりである。読み辛さを抜きにして考証として見ても、十分とは思えぬままに断定して先に進めている部分が目立つように思われ、説得力をあまり感じない(例えば、光秀にはアリバイがあると断定している部分等)。

三分の一も読む前に飽きた本。もうこの人の作品は購入しない。

Sharp Space Townにて電子本の形式で購入。