山本甲士「ALWAYS 三丁目の夕日」(小学館eBooks)

自分ではしゃれた文章を書いているつもりなのだろうけれど、唐突に始まる文章はなんだか独りよがりで読みづらく、思わず乱丁落丁かと思った。実は今回Space Townで購入した3冊はいずれもこの特徴を有しており、そういう物を続けて読むはめになっていい加減参ってしまった。

それはさておき、この世界観に文句を付けるのは間違っているとは思う。西岸良平の漫画はあまり嫌いではないし、作品にはまっていられる限りはこの小説もさほど悪い物ではない。

ただ、あまりにも理想化され過ぎた昭和33年が、時折非常に鼻につく以外は。

ちなみに私は当時まだ生まれていないから本当のところはわからないのだが、物心がつきはじめた昭和40年代半ばまでは、まだ30年代の名残は残っていたんではないかと思う。そしてその程度の視点から見ても、あまりにも都合の良い部分ばかりを理想化しているように思えて、時に気恥ずかしいやらうんざりするやら。

一種異世界物のファンタジーとして読むことができるならば、そう読むのが良いのかもしれない。というか、きっと今の若い子たちにはそういう観点で受け入れられているのではなかろうか。

順序が逆になったが、簡単に作品紹介。西岸良平の漫画を元にした同名の映画作品のノベライズ、もしくは同名の映画の原作小説。昭和33年、東京タワーが建築途中の東京に生きる庶民を描いた懐古趣味の連作短編小説集である。

Sharp Space Townにて電子本の形式で購入。