『戦国茶闘伝 天下を制したのは、名物茶道具だった』三宅孝太郎

借りた本。


著者は小説家とて、所々おや、という記述もある。例として、大友宗麟に関する以下の記述とか(p.48)

宗麟がキリスト教宣教師・ザビエルを豊後に招いたのは、ザビエル来日の二年後のことである。天文二十年(1551)(以下略)

宗麟は、キリスト教そのものに興味を持ったのではない。宣教師達を運んで来る南蛮船との交易が目的だった。とくに、鉄砲と火薬が欲しかった。これは、薩摩の島津、平戸の松浦、周防の大内などと目的を同じくした。日本国内での鉄砲生産地・堺は信長に押さえられている事情を反映していた。

1551年では信長はまだ美濃すら手に入れる前、という以前に美濃についてはそもそも斎藤道三もまだ生きている頃だ。堺を押さえているどころではないよ。


ともあれ。
婆娑羅大名佐々木道誉から説き起こし、時代の背景となる織田信長茶の湯ご政道について、名物狩りについて語り、松永久秀荒木村重、そして明智光秀(島井宗室の項)の謀反について、さらには滝川一益の没落について、名物という観点から説き、最後は松平不昧公のエピソードで名物および茶にまつわる毒殺や怨念と言ったダークサイドの話を語って終わる。実に斬新な視点から歴史を読み解いてくれる、好著である。


へうげもの」の読者にしてみれば、まんま「へうげもの」の世界ではないかと思うかもしれない。しかし話は逆。2004年末に出ている本なので、2005年後半に連載を開始したと思しき「へうげもの」のネタ本であろう。「へうげもの」は考証とかより、むしろ山田芳裕の演出を楽しむ本。考証的な部分を補うために、こちらを併せて読んでおく方が良かろう。


以上、名物茶道具の観点からという、極めてユニークな戦国通史である。



amazonでの、tom0 (東京都江戸川区)氏の評が面白い。一部引用:

私は、以前から、戦国武将が、茶道や茶道具に血道をあげることに違和感を感じてましたし、当時の名品と言われるような茶道具がいくつかを除いて、現在、必ずしも国宝や重文のような評価をされていないのをちょっと不思議に思っていました。
この本をきっかけに、つらつら考えるに、当時の武将らにとっては、オランダのチューリップバブルのような、茶道具バブルが起こっていただけなのではないか?という気が今はしています(ということは、歴史的バブルの最初は日本で、かつそのきっかけを作ったのが信長、ということになりそうな・・・!?)。

茶道具バブルかあ。これまた面白い視点だ。