『ミュージカル映画 ぼくの500本』双葉十三郎

97歳という、映画の『盛衰を誕生から今に至るまでリアルタイムでみてきた著者が、代表的な500作品を選び解説する』本。ミュージカル映画の、特に古いところに興味がある人間にとっては、読む読まない以前に、所有しておくべき本であろう。


個人的には年代順に並べてくれておいた方が、「読」めて好きだったのだが、本書は50音順。ただし、『収録作品年代順索引』が用意されており、こちらは表の中に原題も採点の星も載せられていて、この表こそが本書の集約と言って良いであろう。


他に、付録として

  • 付録1 本書収録作品から選んだ《ぼくの好きな歌》
  • 付録2 本書収録作品から選んだ《ごきげんダンス場面》
  • 付録3 本書収録作品から選んだ《極上ショウ場面》
  • 付録4 本書収録作品から選んだ《種類別ぼくの好きなダンス映画》

という表があり、これらの作品のファンが何を求めているかを理解した書き手ならではの配慮だと感じられた。



ちなみに著者による採点は5点刻みの100点満点でつけられており、最高点の90点をつけられているのは『天井桟敷の人々』と『ザッツ・エンタテインメント』。前者は(録画を持っているにも係わらず)未見であるが、後者は大納得。ストーリー的には陳腐な映画であってもレビューは抜群というものがママあるのがこの手の作品。その意味で、『ザッツ・エンタテインメント』の1〜3、『ザッツ・ダンシング!』は価値が高い。



残念なことに、レビューされている作品は2000年まで。シカゴ(2002)、ドリームガールズ(2006)にも言及はあるが、

話題のミュージカル映画はつくられていますが、残念ながらぼくには「ミュージカルの時代は遥か遠くに去りにけり」の感が深い

という文脈で紹介されているのみ。


基本的には同意だが、21世紀になってからは他にも『ムーラン・ルージュ』(2001)『オペラ座の怪人』(2004)といったミュージカルが作られているのだから、その継続しようとする意思くらいは評価して欲しかった。

ミュージカル洋画ぼくの500本 (文春新書)

ミュージカル洋画ぼくの500本 (文春新書)