坪野吉孝『食べ物とがん予防 健康情報をどう読むか』(文春文庫)
しばらく前に読んだ本の内容だし、某所で言及済みであるのだが、この場でも坪野吉孝『食べ物とがん予防 健康情報をどう読むか』(文春文庫)の、『健康情報を評価するフローチャート』を載せておこう。「ステップ」とあるのは本文通り。「ポイント」は本の内容に私の意見を加えての紹介。
簡単なルールをいくつか理解することで、健康情報の信頼性や重要性を、かなり見分けることが出来るのです。(14ページ)
- ステップ1 具体的な研究にもとづいているか
- ポイント:良く健康食品や代替医療の推薦に出て来るような「体験談」は具体的な研究ではない。例えば、扱った総数のうち何例で改善効果があったのかがわからなければ、どの程度有効なものであるかということすらわからない。
- ステップ2 研究対象はヒトか
- ポイント:動物実験や培養細胞で有効性を確認した物質がヒトでも有効だったという例はかなり少ない。ただし、有害作用に関しての研究ならば、安全側に考えてそれなりの注意を払う。
- ステップ3 学会発表か、論文報告か
- ポイント:学会発表は普通審査なしでできるので、学会発表をしたという紹介だけのデータは、情報の信頼性は高くない。 ちゃんとしたデータであるならば、その後論文にまとめられ、審査を経た上で発表されている筈である。
- ステップ4 定評ある医学専門誌に掲載された論文か
- ポイント:誤解が無いように念のため言い添えるが、これは権威主義によるものではない。定評は、審査の厳しさに対応していると考えて良い。厳しい審査を経たほうにより信頼性を認めるというだけのこと。
- ステップ5 研究デザインは「無作為割付臨床試験」や「前向きコホート研究」か
- ポイント:若干専門的になるが、研究の方法によって、その結果の信頼性は異なる。信頼性が高い情報に重きを置くのは当然。
- ステップ6 複数の研究で支持されているか
- ポイント:科学理論や仮説がただ一つの研究によって「決定的に証明される」ことはない。きちんと批判や論争を受け、そして同じ結果に至る多くのきちんとした研究によって支持されることが不可欠である。往々にしてさまざまな言い訳を並べて自らの孤立を正当化しようとするケースが見受けられるが、これだけ薬の探索が激しい現代において、少しでも可能性を感じさせるものがあるんだったらとっくに研究者がわらわらとよってきているだろう。そういうところで仮に陰謀説みたいなこという人が居るとしたら、その人は世の中なめている。
ともあれ、この本はとってもお薦め!我々の身の回りにはんらんする健康情報をどう見極めるかの指針を与えてくれる本である。