『幸せのレシピ』★☆☆☆☆

ハリウッドが名作をリメイクしてスポイルした新たな例。


以上
以下はネタばれあり。




本作はドイツ映画『マーサの幸せレシピ』(Marthas Rezept/Bella Martha/Mostly Martha)のリメイク。日本公開が2002年とのことで、もう5年も前になるので詳細は覚えていないが、観終えた後の印象は良いものであった。そのため理想化しているのかもしれないが、それにしても本作はひどい。


原作にくらべて主人公もなんだか完璧主義というよりは『暴力的』『攻撃的』にぎすぎすしている感じが勝って感じられた*1し、お姉さんの死を妙に情緒的に長々と描いていて、間延びしていてだれている。「ラブシーン」もべちゃべちゃいやらしいし。

途中で飽きた映画も久しぶりだ。


なによりも、全然テーマが伝わってこない。原作では『他人との時間を共有できない』(上記リンクより引用)主人公の欠点をきっちり描くために置かれたエピソードを、表面的になぞるばかりで、全然その欠点を伝えてこないのだ。だから、説得力が無くなる。

更には、色々と観客の興味をひくための「おかず」を詰め込みすぎていて、そのために何を言いたいのかわけが分からなくなっている感じがする。


主人公を演じるキャサリン・ゼタ=ジョーンズにもその責任の一端はあろうが、それでもキャサリンの存在感は大きかった。映画として何とかまとめたのはキャサリンと、あとは姪のゾーイを演じたアビゲイル・ブレスリンの愛らしさに負う所が大きいのではないかと思う。



元のエンディングは覚えていないから同じかどうかはわからないが、今回のエンディングは『レミーのおいしいレストラン』と構図が同じ。その他色々とあわせ、アメリカ人にはこういうのが受けるのかねえ、という感じの映画だった。



原題は『No reservations』。邦題は原作の日本公開時のタイトルをなぞっていて、原作に敬意を表しているけれども、むしろ『幸せレシピ』繋がりは無いものとして観ればまだ良かったのかもね*2

■音楽

『マーサ』でも重要なシーンで使われていた“♪It's wonderful〜”という曲(Paolo Conte「Via Con Me」)が、本作でも同じような位置で使われている。原作に敬意を評するという点では評価できるのだが、正直この曲だけが浮いていた気がする。

紹介は『マーサ』のほう。も一度観たくなっちゃったな。

マーサの幸せレシピ [DVD]

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*1:後述の、内面描写に欠けるところに因るのではないかと思う。

*2:もちろんそのようなことをしていたら、まず観なかっただろうけど。