チェルノブイリ事故による死亡者数の推定

原子力安全研究グループ」というサイトを見ていたら、「2007.3.26 「チェルノブイリ原発事故の実相解明への多角的アプローチ:20年を機会とする事故被害のまとめ」(共同研究報告書) 」というものがあった。

その中の「チェルノブイリ原発事故による死者の数 ................................ 今中哲二」(注:PDF)というのを少し眺めてみたのだが、なんか違和感。

と、どんどん対象とする人間の数を増やしていって、最終的に2万〜6万人と言っているのだが、おかしくね?


引用部分の直前に挙げられている計算を見ると、基本的には放射線被曝量×がん死のリスク係数×人数である。すなわち、対象とする人数を増やせば増やす程、基本的に数は増える。

ではそれに合理性があるかと言うと、日本における自然放射線の量を見ても、関西と関東とでは、2〜3割程関西人の方が被曝が多いという。全欧州、全地球なんて規模に増やしていけば、チェルノブイリ由来の放射線量なんて、自然から受ける放射線にある分散と比べてもはるかに少ないものになるんではないのか。


実際、WHO報告では被災三か国の740万人を対象に9000件としているのに対し、次のIARC論文では、欧州全域5.7億人と、一気に対象人口を80倍弱に増やし、それによるがん死者の増加は1万6000人と、7000人増、1.8倍にしか増えてないのだ。いかに少ない被曝線量を大人口で掛け合わせたのかを物語ってはいないか?全世界については言うも愚かだろう。


間接的な死者という観点が重要というのはその通りだと思うし、世界的にも放射線にのみ注目されるのは被害に対する救済に繋がらず、むしろ社会・経済的影響の重大性に注意を喚起しようと言う方向であるように聞いている。そういう中に、「ためにする」計算を紛れ込ませていると、むしろ全体に対する信頼性を減らすと思うんだがな。