「プラダを着た悪魔」

プラダを着た悪魔」を観に行った。ネタばれもなにも筋自体は予想通りに進むので、特に配慮せずに書き込む。


まず、メリル・ストリープ演じるボスの、「悪魔」としての記述が弱いように思う。一般的に許容される以上にわがままが強いとは思うが、ファッション界のカリスマと言うその地位を考えればある程度納得のいく部分もある。何よりも、作中のアン・ハサウェイが演じる人物以上にファッションに関心がなく、ファッション関係の(ステレオタイプな)人間像にはどちらかというと嫌悪感を抱いている私でさえ、仕事において妥協のない姿にはそれなりの魅力を感じてしまった。


で、普通の人間から見ても「ダサ子」だったはずのアン・ハサウェイであるが、初めっからきれいすぎる。確かに素人目にも、ファッション業界にいる人間が着る服じゃなかろうとは思ったけどさ。まあ「マイ・フェア・レディ」のヘプバーンも言われた、ある意味ハリウッドの宿痾であろう。


最後に、もしかしたら、日本人はどうしてそこまで思い悩まねばならなかったかが今イチピンと来ないんではないかという気がした。日本人は、変わりつつあるとはいえ、それでも職場にあっては職場の「流れ」を踏まえて、プライベートはある程度犠牲にしてでも、与えられた職位において期待される役割を最大限にこなすことに価値を見出す部分が大きいんではないか。就職する前に望んでいたような仕事ではなくても、当初の自分や周りが思っているような「自己実現」の道ではないにしても、自身でやりがいを覚えるまでに至り、人からも認められはじめ、そして大事な仕事が、しかもステップアップに繋がる大きな役目が与えられたならば、「たかが」彼氏の誕生パーティより優先するのは当然かと思うんではなかろうか。しかも(一応背景色にしておく)「一年で最も重要だからこそベストのチームで臨んでいる」イベントの真っ最中にその役目を放棄するなんてのは、映画的にはあそこでああするしかなかろうと思う反面、それでもなお高く評価することは苦しい気がする。


ま、「ファッション雑誌」も「ジャーナリズム」もあまり区別のついてない私だから、どっちでも一応キャリアアップであり、将来的に発信する立場の人間になる道じゃないか、と思うのかもしれないが。


ともあれ、基本的にはアン・ハサウェイを鑑賞していれば良い、ファンタジー映画なんだろう。私自身はアン・ハサウェイの顔は、あまり好きじゃないんだが。きれいだとは思うけれど。


あ、最後に追記。さんざん「悪口」を言った後では説得力に欠けるかもしれないが、非常に楽しめる映画であった。1時間50分とハリウッドのセオリーにのっとった上映時間で、なおかつ非常にテンポよく話が進む。加えてアン・ハサウェイのファッションショーまで楽しめるのだ。でかい画面で観るために金を出しても、特に損はしないと思うよ。