今週の多読本

The Year of Sharing: Level 2 (Bookworms Series)

The Year of Sharing: Level 2 (Bookworms Series)

Stage 2 (700 headwrods)

SF。自然を保護するために、人間は塀に囲まれた「村」だけに住み、「都市」が存在しない未来。人々は車をつかわず自転車だけで生活している。この社会では12歳になると、自然を「share」することを学ぶために、1年間野生動物の中で暮らす通過儀礼を受ける。鼻にレコーダーが埋め込まれて、1年間の行動が記録される。これは命を落とすことも多い、過酷な通過儀礼である。主人公は、「昔」の人々が都市に住み、車を乗り回す社会に価値を見出し、村に反感を持っている少年。彼が野生の鹿の家族に紛れ込んで、この通過儀礼を受ける話。


救いがない。途中までは少年の成長と冒険物語的に読め、なかなか感動的であったりもする。そのまま甘い結末でしめれば、むしろ傑作にもなりうるはずなのに、クライマックスで物語は唐突に終わる。そして救いがないエピローグ。なんじゃこりゃ。英国の子供向け小説市場においては救いがない話が売れるのか?あと設定がいかにもリベラルっぽい。まあいいんだけどね。

The Witches of Pendle (Oxford Bookworms Library)

The Witches of Pendle (Oxford Bookworms Library)

Stage 1 (400 headwords)

こちらも暗い話だが、これは良い。タイトルにもあるPendleの魔女というのは17世紀の英国に実在した有名な魔女一家らしい。その魔女一家の唯一「魔女」ではない子供が家族を告発するが、本人はその家族の一員だというだけで魔女として迫害を受ける。その心理を追った話。こちらも最後は救いがないのだが、これこそ歴史について、いわれなき差別について「考えさせる」ものだろう。Stage 1の話なのに、そうとは思えぬような出来であったように思う。ただ、話が(挿絵も)暗いので、一気に楽しんで読むという話ではないのが難点と言えば難点か。