パックス・モンゴリカ

そうだ、アマゾンと言えば昨日書店で見かけた本「パックス・モンゴリカ」:

パックス・モンゴリカ―チンギス・ハンがつくった新世界

パックス・モンゴリカ―チンギス・ハンがつくった新世界

これって、岡田英弘

世界史の誕生─モンゴルの発展と伝統 (ちくま文庫)

世界史の誕生─モンゴルの発展と伝統 (ちくま文庫)

一度は読んどけ。そういう本だと思う。

帯によると、近代国家の原型がモンゴルに、って感じのようだから、ちょっと違うのかもしれない。


いずれにせよ、おそらくチンギス・ハーンの足跡をほとんど知らない米国の読者に向けて、事細かに歴史の説明をしてあるようなのだが、その辺りは結構既読のように思え、+αとして何が得られるのかが分からなかったので、それに2500円のハードカバーはどうかなあ、と見送り。

チンギス・ハーン (朝日文庫)

チンギス・ハーン (朝日文庫)

追記:
その岡田英弘が評を書いてた。10月28日付(太字引用者):

現代の制度はすべてモンゴル帝国がつくった


この本は、2004年に出たGenghis Khan and the Making of the Modern Worldの訳書である。著者のウェザーフォードは、監訳者の星川淳氏によれば、アメリカの文化人類学者で、先住民文化の研究にかけては一流だということである。それがモンゴル帝国に目をつけて、この一冊を最初にモンゴルで刊行し、そのあとでアメリカで刊行され、ベストセラーになったそうである。


本書は大きく三部に分かれる。第1部は「草原の恐怖支配」で、チンギス・ハーンが生まれた(と著者が信ずる)1162年から、チンギス・ハーンが即位する1206年までをカバーする。しかし残念ながらこの部は、この本のなかではいちばん出来が良くない。その原因は、第一に『元朝秘史』を、1240年にできたと無邪気に信じているところにあり、第二に、現在のモンゴル人の空想に頼りすぎているところにある。


元朝秘史』は、実は1324年にできた本である。1227年に死んだチンギス・ハーンの生きた時代からは、ほとんど百年近く離れている。チンギス・ハーンと同時代に書かれた記録は実はまったくなく、『元史』の「太祖本紀」のもとになった『太祖実録』でさえ、できあがったのは1303年のことである。


イル・ハーン家の宰相ラシード・ウッ・ディーンが、モンゴル語の史料に拠りつつペルシア語で書いた『集史』も、1304年のガーザーン・ハーンの死後に完成した。『元朝秘史』も同様で、史料のほとんどないケルレン河畔のチンギス・ハーンの霊廟で書いたものだから、史料に伝えられない時代のチンギス・ハーンの業績については、奔放に空想を馳せているのは当然である。しかし実のところ、1195年以前のことは、ほとんど何もわかっていない。


本書は、「第2部 モンゴル世界大戦」と、「第3部 グローバルな目覚め」で、いよいよ本領を発揮する。これによると、現在の欧米が主導する世界で普遍とされている制度――民主主義、資本主義、宗教と政治の分離、印刷、紙幣、軍隊、連邦制など――は、すべてモンゴル帝国に起源があるという。これらについては、評者もおおむね同意見である。


ところで、チンギス・ハーンモンゴル帝国についての悪評は、実は18世紀のフランスに源があった。1755年、パリで上演した戯曲『中国の孤児』で、ヴォルテールは、フランス王の替え玉として、チンギス・ハーンを罵った。それ以後、モンゴル人についての悪評はいっぺんに盛んになったそうである。それについては本書を見られたい。
【評者 岡田英弘 東京外国語大学名誉教授】

モンゴルの世界史上の意義の見直しという意味ではかなり共通と見ていいのだろうかね。それを「世界史の始まり」と表現するか「近代国家の原型」と表現するかの違いということなのか。


いーんだが、民主主義もモンゴル?若干違和感。