開高健「ずばり東京」(文春ウェブ文庫)

1960年代の東京のルポとのこと。だからもちろんかなり古い部分もありはするのだが、その一方なんだかちょっと古びた東京紹介って感じで、思った程違和感もしくは古くささもしくはノスタルジーみたいな物が少ない気がする。
ある意味開高健がいかに個別の事象の中から普遍的な部分を抽出していたかということなのかもしれないが、この場合いーんだか悪いんだか。実際私は「三丁目の夕日」(と一時帰国の間読んでた伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」*1)の影響で、ちょっとノスタルジックな東京について知りたくて読みはじめたのだから。

紹介文
開高健も若かった、東京の街も若かった、1960年代前半のことである。深夜タクシーに深夜喫茶、屋台のオデン屋、トルコ風呂考現学、佃─明石町の渡守り、出稼ぎ者、労災病院、銀座の裏方さん、遺失物係、うたごえ喫茶、ある都庁職員の一日、練馬鑑別所と多摩少年院など、東京のさまざまな貌を、著者自身も泥酔、飽食、そして宿酔に苦しみながら、足と舌と裸の眼でさぐる。東京オリンピック前後の、日々生成をくりかえすアメーバの街をさまよう、今も輝きを放つ名ルポルタージュ

*1:ちょっと(もしくは大いに)気障で鼻につくところも無いではないが、面白かった。