三国志物について

mobanama2004-08-03

私がこれまで読んだ三国志物のうち、通史として扱っているもしくは扱おうとしている物で、取り上げる価値がある(一期間かなりはまった)ものについて相関を書いてみる。ちなみにそこそこ名前が出る中では柴田錬三郎北方謙三、安能努の三国志は未読。SF・ファンタジー系は取り上げない(反三国志等)。

分類の軸をどうするかだが、漠然とイメージはあるんだがうまく言葉にならない。とりあえず「【左】親魏←→親蜀【右】」と名付けておく。紹介は例によって記憶に残っているイメージで書いているので必ずしも正確ではないかも。

(正史)三国志
基準点1=曹操(魏)中心
演義三国志演義
基準点2=劉備(蜀)中心
(吉川)吉川英治三国志
準基準点。演義よりさらに【右】。戦後の日本の三国志の基準となる古典。物語の冒頭から劉備が母に茶を買い求めるシーンから始まる等、演義より徹底して蜀中心。劉備が無能だが度量の大きい好人物として描かれる。私にとってはそのような劉備がなぜ一方の雄たり得たのかってところが三国志遍歴の出発点だった。おそらく(一定以上の世代の(^^;)多くの人にとっての三国志体験とは、同様に吉川から演義、正史へと進み、吉川によって刷り込まれたイメージを否定・修正していく過程であったのではないだろうか。その意味では、ここでは歴史的観点から「準基準点」として扱っているが、実質上は最大の基準点ともいえる。(初出連載1939(08/26)-1943(09/05);中外商業新報、台湾日々新聞など5紙)
(横山)横山光輝「三国志」
演義の【右】吉川の【左】。吉川の大きな影響下にあるが、演義・正史を取り入れる。特に最初期はほぼ吉川をなぞっていたが、徐々に中国取材等も行い、独自性を増していった。とはいえ基本的には先行する古典群に忠実であろうとしている作品。吉川とともに物語・人物描写面で、また特に造形面では長期にわたり強い影響を与え続けている(いた?)。(初出連載1974(04)-1988(10);希望の友、少年ワールド、月刊コミックトム
(秘本)陳舜臣「秘本三国志
正史の【左】。曹操を時代を動かす中心人物とし、劉備を任侠の徒として描いた先駆的作品。さらに観察者として五斗米道の指導者(張魯の母)をもってくることで、宗教的視点までも含めており、正史を踏まえながらも自由な発想で歴史の実像に迫ろうとする意欲的作品。はっきり言って親魏親蜀といった観点からじゃ分類しきれない方の典型。(初出連載1976-1977;オール読物)
(興亡)三好徹「興亡三国志
正史の【右】演義の【左】。というよりもむしろ正史と演義の見事な融合と呼ぶべきだろう。演義の面白さに正史の視点をきっちり取り入れた、すれた「三国志読み」から古典的「三国志読み」までの多くが楽しめるであろう正当的傑作。(初出連載;ビジネスジャンプ。ムック版1989(1巻), 1990(2巻)、単行本1997(?)、文庫版2000年01-04月)
(蒼天)王欣太蒼天航路
正史の【左】。最【左】翼的作品。長らく強い影響を与え続けていた吉川、横山の影響を完全に脱する。正史を基準に演義を取り入れたものをベースとする。曹操を時代の中心人物として、劉備を秘本よりさらに徹底して任侠の徒として描き、その他の人物にも正史の解釈を踏まえながらも独自の解釈を加えて独特の世界を描き出す。その独特の世界を王欣太氏の個性あるパワフルな漫画手腕によって強引にまとめあげた、非常に意欲的な作品。(初出連載1994-;週刊モーニング

さて、以上について【左】【右】の関係を横軸に、縦軸に初出をとって図にしてみた(興亡三国志は初出がわからなかったので出版時)。は、いいんだけど、はてなでは図はどうやって張り込むのだろうか。とりあえず貼ってみたのだが、小さい。うーむ。

もっといろいろな作品を図にぶち込めば、秘本の先駆性が結構はっきりと見えてきたりしてね。