Klaus Nomi

Klaus Nomi

Klaus Nomiという名前を御存じだろうか。1979年頃から活動をはじめ、83年にはエイズで他界したドイツ出身のミュージシャンである。その特徴はオペラ+ロック。声楽を学んだという高いカストラートのような声。そのルックスも異様である。頭頂と側頭部に、キューピーと鉄腕アトムを足した様に突き出た髪型、肩の突っ張った変な服*1。 日本ではスネークマン・ショーの作品で紹介されて有名になり、イシバシ楽器セイコーのCMにも使用されたとか。気付いてから振り返ってみれば、当時の江口寿志のマンガ(「すすめパイレーツ」)にもその姿は描かれている。


私との出会いは大学に入っていたから84年以降。一人暮らしの生活で、テレビを見ながらうとうとと眠り、深夜番組の音で目が覚めてみたら、画面にはその特異なルックスと、高くて独特の艶のある声。エイズで亡くなったという経歴までが、正直なところその印象のいかがわしさをさらに強調して、興味をひいたことを覚えている。その謎のミュージシャンの曲を聴いてみたくて、レコードプレーヤーも持っていないのに貧乏生活の中から金を捻出してLPを購入。私がこれまで購入したわずか5枚ほどのLPの一枚である(他は富田勲ホルスト惑星」、確かTacoの「Puttin' On The Ritz(踊るリッツの夜)」の入ったアルバムも買ったはずだ。アル・ヤンコビックの「Eat it!」を買っちゃったのは内緒だ(^^;)。


さて、今を遡ること約4か月前、今年の6月28日Eclipsed: the Best of Klaus Nomi [FROM US] [IMPORT]を注文した。その時の記述では3〜5週間以内に発送とあったので、首を長くして待っていると…


8月5日になって、商品がまだ確保されておらず、発送が4〜6週間ほど遅れるとのメールが。


9月17日になって

誠に申し訳ございませんが、大変残念なご報告があります。お客様のご注文内容のうち、以下の商品については入手できないことが判明いたしました。

おい(^^;。これだけ待たせてこれかよ。


というわけで、御縁がなかったものとあきらめていたのだが、10月12日になって、改めて検索しているうちにまた欲しくなってしまい、今度はEssential [FROM UK] [IMPORT]を選択した。すると…


10月21日になって、またもや商品がまだ確保されておらず、発送が4〜6週間ほど遅れるとのメールが。またかよ!!(^^;。でも前回よりいってくるタイミングが早いだけ良いかと思っていたら…


そのメールを確認してわずか二日後、10月23日になって発送したとのメールが。どっちやねん(^^;


かくして妙な紆余曲折を経て、昨日10月24日AmazonからKlaus NomiのCDが届いたのであった。



さて、はじめに注文したEclipsedは、全部で15曲。それに対してEssentialは20曲。曲を並べてみると、

Eclipsed
1. Total Eclipse
2. Lightning Strikes
3. Cold Song
4. Wasting My Time
5. You Don't Own Me
6. Keys of Life
7. Rubberband Lazer
8. ICUROK
9. After the Fall
10. Just One Look
11. Ding-Dong (The Witch Is Dead)
12. Simple Man
13. Three Wishes
14. I Feel Love
15. Can't Help Falling in Love

Essential
1.Cold Song
2.Can't Help Falling in Love
3.Keys of Life
4.Lightning Strikes
5.Twist
6.Nomi Song
7.You Don't Own Me
8.Wasting My Time
9.Total Eclipse
10.Samson and Delilah (Aria) [Live]
11.Der Nussbaum
12.From Beyond
13.After the Fall
14.Just One Look
15.Falling in Love Again
16.Icurok
17.Rubberband Lazer
18.Wayward Sisters
19.Ding-Dong! The Witch Is Dead
20.Simple Man

タイトルと同じ色をつけたものが、相手にない曲である。これを見ると…。おや?Essentialの方がお得だったのかな?


いやいや、待て待て。問題は他にもある。私は(貧乏だったり(^^;などいろいろの理由はあったが)所詮「シンプルマン」しかLPを持っていなかった浅いファンである。このことは、シンプルマン収録の曲が多い方がうれしいということを意味する。ではシンプルマン収録曲はというと…


Simple Man
1. From Beyond
2. After The Fall
3. Just One Look
4. Falling In Love Again
5. Icurok
6. Rubberband Lazar
7. Wayward Sisters
8. Ding Dong
9. Three Wishes
10. Simple Man
11. Death
12. Return

色を付けていないのが、EclipsedとEssentialのどちらを選んでも含まれているもの。赤と青のものが、それぞれ上と同じ色のタイトルにしか含まれていない曲である。圧倒的にEssentialの方が多い。というか、EssentialはSimple manがほとんど含まれているじゃん。というわけで、この2枚のアルバムの比較からは、結果的にEssentialにしておいて良かったね、なのだが。


問題は残る緑の2曲である。


「シンプルマン」はかなり繰り返し聞いたため、どの曲も印象が強くて好きなのだが、その中で特に強く印象に残っていた曲は「Ding Dong」、表題曲の「Simple man」と、そして最後の曲*2だった。

より正確に言えば、印象が強かったのは最後の曲だけというわけでもないかもしれない。アルバム全体としてみれば明るい曲も混ざっているのだが、オープニングの「From Beyond」、中間の「Wayward Sisters」そして最後の曲が、どこか厳かで、葬送の曲の様に思える曲であり、全体の印象を大きく決定付けているのだ。最後の曲は、一種その象徴としての曲であったように思う。

この曲の歌詞の中に、繰り返し「Remember me」というフレーズが出てくる。葬送の様だと感じた曲調―――そこには鐘の音も用いられていた―――とあわせ、まさに死を迎えようとするNomiが自らの記念碑として作り上げた作品である「シンプルマン」の全体を象徴する曲であるという感じを受けたのだった。


とはいえ、この曲は、アルバム「Simple man」という完成された作品中の文脈において意味が深かった曲である。ベスト盤というものとしては、その曲単独で取り上げたときの完成度を優先して集めて並べるというのが正しい姿勢であろうとは思う。


ただCDで「Simple man」を持たない(=聞くことができない)私としては、ちょっと欲しかった曲であった。

*1:裃をイメージしていたとか

*2:だと思っていたのだがwebで調べたところでは「Death」が問題の曲であるようだ。よって以下の記述は不正確であるが、私の印象的に最後の曲ということで以下そう扱う(^^;