毎日「新聞」?
昨日の毎日新聞の記事にこのようなものがあった。引用はYahooから。強調は引用者。
参考までに毎日新聞サイトでのリンクおよびほぼその前半部だけの記事。英文での報道の様子の例としてUPの10月26日の記事についてもリンク。
<劣化ウラン弾>被ばく状況の確認に成功 米英の研究者
12月6日1時11分配信
【ニューヨーク小倉孝保】劣化ウラン弾の健康被害を調べている米英の研究者が5日、これまで困難とされてきた劣化ウランの被ばく状況の確認に成功したと発表した。研究者は調査で用いた新技術を、湾岸戦争(1991年)などでの劣化ウラン弾による被ばくの調査に活用すべきだと主張している。
調査したのは英レスター大地質学部のランドール・パリシュ教授をリーダーとする研究者7人。米ニューヨーク州オールバニ郊外で57〜84年に米軍用劣化ウラン弾などを製造していた「ナショナル鉛産業」の元工場労働者5人と周辺住民18人の計23人の被ばく調査を実施した。特別な試薬を使って23人の尿を分析した結果、元労働者5人の尿から1リットル当たり63.7ナノグラム〜122ナノグラムのウランを検出した。周辺住民は0.91〜5.42ナノグラムだった。
(以下略)
気になったのは二点。
■ナノグラムを「被ばく」って言葉遣いはどうよ?
英文記事からはMC-ICP-MS(mass spectrometry)を用いたことがわかり、これはぐぐると同位体測定に用いられているようである。しかし日本語記事を読んでも、ウランの量を測定していることまではわかるのだが、具体的に何を測定しているのかわからない。少なくとも英文記事から判るのは今回使った新しい方法により、各個人のdepleted uraniumへのexposureを、exposureから20年たっても測定可能になったということである。これは素直に解釈すれば、「劣化ウラン」への「曝露」ではあるまいか。
確かに「被曝」とは「曝露を被る」であるから、辞書的には間違ってはいない。しかし日本の非学術的な場においては、「被ばく」は『放射線』(被曝)もしくは『核兵器爆発の害』(被爆)を被るという意味で使うのが一般的な用法ではなかろうか。
被曝(ひばく)とは、人体が放射線にさらされる事である。
戦後、放射線場に曝露された人間の健康影響が、政府やメディアの間で広く関心を集めたことから、日本においては科学の文脈以外の場で「被曝」といった場合は、ヒトの放射線被曝を指している。
まさにその通りの記述がある*1。
なんか印象が強くなるように恣意的に選んだ単語の選択のように思えるなあ。
で、これがマスコミ用語かというとそうでもなさそうだ。
朝日では「劣化ウラン 被ばく」では検索されない。朝日は「被ばく」じゃなく「被曝」を好むようで、「劣化ウラン 被曝」にすると二件出てくるが、これらは「ヒバクシャになったイラク帰還兵 [編著]佐藤真紀」という書籍の紹介記事と、「被爆ベラルーシの子 助けたい」というチェルノブイリ関係の記事の文末にとってつけたように「劣化ウラン」に言及しているだけのものである。
読売でも「劣化ウラン 被ばく」で一件、「劣化ウラン 被曝」で二件。いずれも朝日同様、記事で両者に別個に言及しているのみで、毎日のように両者がリンクしているわけじゃない。
■「ナショナル鉛産業」って言葉遣いもどうよ?
冒頭にリンクした英文記事から研究者の名前などの単語を拾ってぐぐったものを調べる限り、おそらく「National Lead Industries」のことであろうと推察される。
さて、普通「NIH (National Institutes of Health)」はなんと訳されるだろうか。
「ナショナル衛生研究所」?
いやいや、「国立衛生研究所」である。
このように普通「National」は「国立」と訳すよね?実際「国立鉛工業」と訳してるサイトもある。
なんで毎日新聞という日本の四大新聞の一角を担う新聞社の海外派遣記者ともあろうものが、「National」を唐突に「ナショナル」と訳す? 松下へのサブリミナルなdis?*2
これもぐぐると、そのような表現を使っているのは「劣化ウラン=ヒバクシャ」的なサイトばかりである。
こういった言葉遣いをみていると、毎日は報道機関というより、その手の集団の機関誌か同人誌のようだね。
参考:http://plaza.rakuten.co.jp/12months365days/diary/200711140000/
これまでの教訓。
朝日新聞は記事の大きさや表現が実際の重要度とは比例しないので注意しましょう。
毎日新聞だけを読んでいると、事実が正しく伝わっていないことが多いので注意しましょう。