小説版「宇宙戦艦ヤマト」 −穢れと放射能−

多分今から10年ほど前に、古本屋で小説版「宇宙戦艦ヤマト」を見つけた。私はテレビアニメ版はもとより、映画版、漫画版*1などと観てきたが、生憎その時点まで小説版は未読であったことと、たまたま読むものがなかったため*2手にとってみた。


実は小説版にはさまざまな版があるようで、かなり古い朝日ソノラマ文庫であったことは覚えている。ひおあきら版の漫画同様、随分とTV版とは違うと思った記憶があるので、多分人気が出る前のノベライズである石津嵐版(豊田有恒原案)ではないかと思う。


古い話であるため、どの程度TV版と筋立て等が異なっていたかなどという記憶は殆どないのだが、唯一はっきり覚えていることが一つある。


ご承知の通り*3 ガミラス放射能*4の中でしか生きられないため、遊星爆弾によって地球の表面を放射能で覆おうとした。これは小説版でもTV版と共通の設定であった。


ただ、小説版の遊星爆弾はすごい。その「放射能」はその周囲の物質までもじわじわと放射能に変える性質をもっている。地球人は地表の放射能汚染から逃れて地下に都市を築いて避難しているのだが、無限に侵食してくるその放射能によって、地球人の命運は風前の灯となっていたのだ。


おそらく中性子や高エネルギーのガンマ線によって放射化が起きることをイメージしているのだろうが、この知識が「放射線は放射化を起こす」と単純化され、さらに全ての放射能が放射化を起こすという風に変換されていったものであろうと考えられる。*5



閑話休題id:nuc氏が、エントリ『放射性物質 - 白のカピバラの逆極限 S144-3』の中でこのように語られている。

どちらかというと、放射線に限らず危険物は「穢れ概念」として理解されていると思うんですよ。

その通りであると思う。遺伝子組み換えへの反応、電磁界における恐怖症のありかた、「化学物質」への偏見(もしかしたら「ユダヤ」資本への反感w)、これらは皆「穢れ概念」として理解されていることによるように思う。いずれも明確に感知できないのに、いったんこちらの「結界」に入り込んでしまうと(祓う手段*6を持たぬ限り)いつまでもそこに残るのだ。


しかし、放射線は、小説版宇宙戦艦ヤマトの事例にあるように、その「信仰」の中において更にもう一つ「恐ろしい」特徴を持つ。単に残留するのみではなく、「伝染性」の「穢れ」でもあるのだ。えんがちょが触るとえんがちょになる。まさに正統的な、これ以上ないといってよい「穢れ」であろう。


悪影響の親玉にも祭り上げられるはずである。

*1:すくなくともひおあきら版は

*2:活字中毒には少々問題となる状況なのだ。

*3:そんなに周知のことなのだろうかw

*4:以下用語は当時の通用に従う。

*5:で、正直言えばこれは私も子供のころそのように思っていた記憶がある。

*6:=コスモクリーナー、自然食、ぐるぐるのついた白い布w