「レミーのおいしいレストラン」★★★☆☆

正直言って、ポスターなどでコンセプトを知っただけの時はもちろん、トレーラーを見ても観に行こうとは思っていなかった作品だった。しかし封切られてみると、結構評判が良い。そこで、観に行ってみた。


物語の舞台はフランス。『誰でも名シェフ (Anyone Can Cook)』がポリシーで同名の本も出していた名シェフのグストーに感化されたドブネズミ*1レミーが、嵐に流されてパリに辿り着き、おりしもレストラン・グストーで追い回しとして働くことになった無能な若者リングイニと巡り合い、料理を作り始めるという話。


筋立てを見てのとおり、思い切り御伽噺ではある。


別段ネズミは嫌いではないが、よりによってネズミに料理を作らせるか?という先入観は、まあ正しかったともいえる。シーンによっては、結構ゾッと来るものがあった。*2


といいつつも、全体的なストーリーとしては、うまく二転三転させていて、結構面白い。台詞も、通俗的ではあれ、なかなかの名台詞が多かったように思う。


特に、グストーの『誰でも名シェフ (Anyone Can Cook)』というポリシーが大嫌いで、酷評によりグストーを苦境に追い込んだ、最大級に影響力の強い批評家*3によるレミーの料理の評の部分は、なかなか面白かった。『誰にでも才能があるわけではないが、才能はいかなる場所からも生まれてくる』という趣旨のところなど、文章をひかえておけば、結構応用が利きそうなものがいくつかあった記憶がある*4。また、『われわれ評論家は作り手と違ってリスクを負っていない』と「自白」する部分なんかは、評論家への嫌味なんだろうな。


意外に良い作品であった。




普段私は邦題タイトルに文句をつけることも多いが、「レミーのおいしいレストラン」というのは、これはこれでうまい。原題のままでは日本語ではRatとの語呂が合うわけでもないから、訴える力が非常に弱そうだからね。

英語圏の人にとっては、原題『Ratatouille*5』というタイトルは、ただの語呂という以上になかなかうまく活かされており、いい感じなんではないだろうか。




そういえば、冒頭に変なUFOのショートフィルムがあったんだが、ありゃなんだ?サービス?*6 *7

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*1:それ以前より嗅覚味覚が非常に優れているという設定。作中では、ネズミは人の声や、個体によっては文章までも理解できるが、人はネズミの言うことを理解できない。

*2:逆にそのシーンできちんと「ゾッ」と出来た分、劇場で観た価値はあったかもしれない。

*3:すなわち「ラスボス」。声がかっこいいと思っていたら、ピーター・オトゥールアラビアのロレンスである。

*4:ただ、それが具体的にどんな表現であったか、という紹介はできない。というかそれ以前に、どういう状況のどういう趣旨の台詞かということすら、覚えておけるような記憶力は持ち合わせていないのだった。残念。

*5:=Rat a too ee。作中で人間側主人公のリングイニが「ラットのお尻」に聞こえておいしそうではないという台詞があるのだが、その「お尻」の部分の単語が思い出せない上に検索してもうまく見つけられない。もどかしい。ちなみに、映画の中のラタトゥーユはなかなかおいしそうであった。

*6:書き終えた後でwikipediaを見たら、『本編上映前には、ピクサーの短編作品である『リフテッド』が同時上映される』とあった。そういうことだったのか。場所を間違えたかと心配になったじゃないか。面白かったけど。

*7:ちなみにend creditsの末尾には取り立てておまけと言える様な映像はない。まあend creditsで席を立たれるのは嫌いだから書かなくてもいいんだが。end creditsといえば、最後の方にモーションピクチャーは使ってないぞ!と言っているアイコンが一個出ていた。なんとなく古くからアニメに取り組んできた会社の意地みたいな物が感じられて面白い。