リトル・ショップ・オブ・ホラーズ

60年代頃のアメリカを舞台にした80年代のミュージカル映画。元は二日で撮った白黒映画だったのが、舞台のミュージカルとして蘇り、それの映画化と言う不思議な経緯で出来上がった映画だとか。


貧民街の花屋に勤める、身寄りのないさえない青年が、たまたま手に入れた変わった植物のおかげで有名人になるが、実はその植物は人の血(肉)で育つ植物であり…という物語。


画面の作り方や小道具なんかも時代の雰囲気を出しており、曲の当てはめ方や、登場人物のキャラクター設定など、伝統的なおバカなコメディのミュージカルを踏まえた感じで楽しい出来。ついつい、本編を見追えた後で、監督のコメント版を見はじめたら、それも最後まで見ちゃったくらい。(こーゆーところ、やっぱりDVDは楽しい)


コメントを最後まで見ちゃったおかげで分かったことによると、舞台のオリジナル版では主人公二人が最後に食べられちゃうという話だったらしいのだが、試写で不評だったためハッピーエンドに変えたと言う。


個人的には、ミュージカルに求めるものは、歌や踊りであって、極端なことを言えば、ストーリーは付け足し。特におバカなコメディの場合には、シリアスなラストシーンは、歌や踊りの感興を削ぐ邪魔ものでしかない。舞台の場合は、さらにストーリーより歌と踊りの鑑賞に重点が移るし、監督も述べているようにすぐにカーテンコールで気分が改まるからシリアスなエンディングでもいいのだろうが、映画はやっぱりハッピーエンディングがいいなあ。監督としては不満だったようだが。


それにしても、今ならおそらくCGで作っちゃったであろうクリーチャー、最大の物は60人で操作したとか、シリコンラバー製ゆえに速い動きには制約があるところを早口の台詞とあわせるために、カメラを普通一秒24コマの所を16コマで撮影した、など、芸があって楽しい。


近年のCGはどんどん質が上がっているのはわかるが、当初は凄いと感動したものの、最近はどうも薄っぺらい感じを受けることが多くなった。それに比べると、マペットを使用した映画は、時に材質等の制約による動きなどのリアリティには劣っても、その存在感には凄いものがある感じがするのであった。


他に監督のコメントの面白かったところでは、現代の映画に比べるとずいぶんと長回しをしているとのことであるが、「踊る大紐育」などの古いミュージカルを見ていると、さらに比べ物にならないくらいの長回しでタップダンスが撮影されている。撮影や編集の方の「芸」でごまかされていない分、そういう個人的な芸に関しては、古い映画ほど凄いものがあり、そこを鑑賞する分には今でも十分見ごたえがあるとの意を強くしたのであった。


何はともあれ、もっともっとB級の映画かと思っていただけに、うれしい収穫であった。