若干真面目にコバルト60を含んだ鋼材に関して

イタリアの報道でも、まだ数値情報はないとのこと。英語情報も取敢えず今のところ見つからない。なのでどの程度事態が深刻であるのかはわからないが、同様な事象が過去にあったのか否か。


となると、真っ先に想起されるのは台湾の「民生アパート」の事例であろう。

1982年に陸軍化学兵学校で紛失したCo−60線源23.8Ci(8.81×10**11Bq)が、学校の出入規則の緩さのため、勝手に入り込んだ民衆に拾われ、それを金属スクラップとして古物屋に売り、製鉄会社に転売されて鉄筋として再利用された

という経緯により、最終的に10年間で数千人が外部被曝したとされる事例である。


これが広い意味での「中国」だけの事例かというと、あにはからんやアメリカでも同種の事例があったりする。まあ直接的当事者はメキシコだが。

1983年12月メキシコのヤレス(Ciudad Juarez)市で、放射線治療装置が病院の倉庫から持ち出され、スクラップ業者に売却されて解体された。この装置の線源容器はスクラップ業者に持ち込まれる途中で破壊され、その中に含まれていたコバルト60(Co−60)のペレットは運送中に散逸して道路や住宅地に散らばったり、スクラップ業者が売却した製鋼所で屑鉄といっしょに溶解されて数千トンの放射能汚染鉄材となった。この汚染鉄材で作られたスチール製品はメキシコと米国で販売されて、一般市民が被ばくすることとなった。

の事故による被ばく者は数千人に上り3〜7Svの高線量の被ばく者もあったが死者はなかった。この事件を契機に米国では国境における放射能汚染物品の検査体制が整備された。

3〜7Svってハンパない被曝である。短期間に一気に浴びてれば何名かの方は亡くなってても不思議ないくらい。そう思うと、ここの「死者はなかった」ってのは、実際そうなりかねない事態だったという重みのある一文に思える。



今回の事例もおそらく「これはひどい」と称するに値する事態である事は間違いない。またえらくタイムリーであるので、そうしたい気持ちも重々わかる。しかし安易な侮支ネタ*1に堕すべき事例でもないように思える。

*1:どうでもいいがMS-IMEで「支那」って出ない。こういう単語にまで政治持ち込むなよ。これだからMSは嫌いだ。