『「教会はガリレオより理性に忠実」ローマ教皇の講演に伊大学が猛反発』
WIRED VISIONの標記記事がいまいちよくわからない。
科学者グループは同大学に宛てた書簡の中で、教皇(当時はヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿)が1990年にガリレオ裁判について述べた見解が――ひいては、科学についての見解も――、「われわれの感情を損ない、屈辱を与えた」と主張した。
というのが『学年度の始業式である1月17日(現地時間)にに予定されていたベネディクト16世の講演に対する抗議を行なった』根拠であるようで、その見解と言うのが故ヨハネ・パウロ二世がガリレオの有罪判決を間違いと認めた際、
一方、英紙『The Times』の記事*1によると、現在の教皇ベネディクト16世は、当時ヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿としてヨハネ・パウロ2世を補佐する立場にあったが、「ガリレオの時代、ローマカトリック教会はガリレオ自身よりもはるかに理性に忠実であり続けた。ガリレオに対する一連の措置は、理にかなった公正なものだった」と述べたという*2。
というものだとか。
記事からはこのタイミングでそこまで加熱しているという理由がいまいちピンと来ない。
記事の中に張られた英文ソースに辿れば判るのかもしれないが、たった今は英文のリンクに辿る元気がないので、備忘。
ベネチア出身の物理学者、Tommaso Dorigo氏は自身のブログでこの論争を追っている。
Timesの別記事によると、教会側を擁護する人々は、ガリレオが処罰されたのは、発言内容というよりはその姿勢に原因があり、「地動説を受け入れない人は人類の恥」「成長しない子ども」など過激な発言をガリレオが行なっていたせいだと述べているという。
教皇が今回予定していた講演の原稿はこちら(イタリア語を英語に翻訳したもの)。
最後に、個人的な正直なところを言えば、現法王はイスラムに関する発言時に透けて見えた差別意識、中南米での「虐殺や奴隷労働の過去」無視発言とかあるから嫌いなんで、どうしても研究者側に偏った見方になりかかっている。
■追記
「舌禍法王!?」より。
ファイヤアーベントの名前を見かけた時点で何となく予想はついていたんですが、どうもこれ、「17世紀当時のカトリック教会が依拠していた真理性のパラダイムにおいては」という文脈的条件がついた一節を、「法王の発言は『現在においても同じパラダイムが真理性の条件として適用されるべきである』という規範的主張を含意している」という形で読み込んだために起きてしまったことなんじゃないか、という気がしてきました。
とはいえ「前回」のことを考えると、この法王の場合は無意識に/意識的にローマカトリックの優越を大前提にしている気がして、「含意」が真実である可能性が高い…と少なくとも人々に思わせる可能性が高いのではないかという気もする。