インコを飼って鶏が食べられない?

断片部-nogaminの断片」さんに「名づけることと「人間性」について。食べることと飼うことをめぐって」というエントリがあげられていた。エントリの主題とは少し離れるのだが、私はこの一節に反応した。

インコを飼い始めた友達は鶏肉が食べられなくなったといっていたし、豚をペットとして飼っている人は豚肉食べられるのかな

前半と後半が全然呼応していない。前半は、「犬を飼い始めた友達は豚肉が食べられなくなった」というレベルだと思うのだが。

その「友人」さん、飼っているくらいだからインコをよく観察しているだろうに、おかしな理屈であると思わないのだろうか。


インコ類は、指を見れば、前に二本、後ろに二本振り分けられている。一方、ニワトリなど他の鳥では前に三本、後ろに一本だ。インコとニワトリでは指の振り分けが全然違うのである。

哺乳類では蹄が分かれているか分かれていないかで食の対象となりうるかどうかが変わったりするくらいなのに、なんでこのような大きな違いを無視するかな。




もう少し学術的な話をすれば、ニワトリは、Sibley-Ahlquist鳥類分類によると

鳥綱 > 新顎下綱 > キジカモ小綱 > キジ上目 > キジ目

に含まれるキジ科Gallus属のgallusという種である。


一方、オウム目

鳥綱 > 新顎下綱 > スズメ小綱 > オウム上目 > オウム目

となり、下レベル(哺乳類で言えば、有袋類と有胎盤類ぐらい違うレベル)までがかろうじて同じで、小綱レベルから異なっている。



参考までに、哺乳類で、有胎盤類を含む真獣下綱の分類を示せば以下のようになる。(wikipediaの記述を元に改変)

これで比較すると、先ほどは「犬を飼っているから豚を食べない」という例を挙げたが、犬はローラシア獣上目の食肉目、豚は同じローラシア獣上目に属する鯨偶蹄目である。同じ上目に属する「近縁」なのだ。



「犬を飼っているから(同じボレオユーテリア単系統群に属するが上目レベルで違う真主齧上目の)ウサギは食べない」より
「犬を飼っているからジュゴン(上目レベルで異なるアフリカ獣上目の)は食べない」より
「犬を飼っているからアリクイ(上目レベルで異なる異節上目の)は食べない」より


もしかするともう少し離れているかもしれないのが、


「オウムを飼っているから鶏は食べない」


なのである。




まあ一般的日本人からみれば日本と韓国と中国の違いは自明でもアフリカや欧州の国々の区別があまりつかないように、分類上の距離なんて心理的距離に関係ないと言われればそれまでだが。*2

*1:以下の二つの上目を含む単系統群らしい。ということでここだけ表記上のレベルを一個あげる。

*2:いや、逆にだからこそ、他ならぬインコ飼いがそういうことを言うのに反応したのかな。滞仏経験のある人が、英仏独を混同するようなことを言ってたら、そいつフランスで何を見てきたの?って思うでしょ?