なんで今頃低周波電磁波の規制が話題に?

低周波電磁界のことは詳しくないが、送電線などの極低周波電磁界については、疫学を裏付ける機構面でのデータが得られないこと、再現性の乏しさ、交絡因子*1の影響が不明確であることなどから、現実的に存在する量に関してはシロに近いグレーということで落ち着いたものかと理解していた。また、IHなど中間周波の物についてはまだ研究途上であると理解していた。


そこにこの報道である。例として、見た中で比較的詳しく書かれていた東京新聞2007年6月18日 朝刊の電子版記事から引用

家電の電磁波法整備を WHO 初の国際指針で勧告


電子レンジなど電化製品や高圧送電線が出す超低周波電磁波の人体影響について、世界保健機関(WHO)が「小児白血病発症との関連が否定できない」として、各国に対策法の整備など予防的な措置を取ることを求める勧告を盛り込んだ「環境保健基準」をまとめた。電磁波の長期的な健康影響についての初の国際指針で、十八日にも公開する。


WHOは、具体的な規制値は示さなかったものの、日本や米国などでの疫学調査から「常時平均〇・三−〇・四マイクロテスラ(テスラは磁界や磁石の強さを表す単位)以上の電磁波にさらされていると小児白血病の発症率が二倍になる」との研究結果を支持。「電磁波と健康被害の直接の因果関係は認められないが、関連は否定できず、予防的な対策が必要だ」と結論づけた。


経済産業省は今月、作業班を設置して送電線周辺の超低周波磁界規制の検討を始めたばかり。電磁波の人体影響に着目した規制がない日本も対策を迫られることになる。


WHOによると、通常の使用状況で電磁波が強いのは、ヘアドライヤーや電気かみそり、掃除機、電子レンジなど。電子レンジから三十センチで四−八マイクロテスラの電磁波を浴びる。テレビは一メートルの距離で〇・〇一−〇・一五マイクロテスラ。


環境保健基準は、高圧送電線から住宅地や学校などの施設を一定の距離を置くなどの対策を講じているイタリア、オランダなどの例を紹介。テレビや電気カーペットなどの電化製品に電磁波レベルの表示を義務付けることも含め、各国に市民の電磁波暴露を減らすための法律を整備するよう求めた。


WHOは、米国の高圧線付近で小児白血病の発症例が多いとの報告を受けて一九九六年から、電磁波が人体に与える影響を調査していた。携帯電話などが発する高周波の電磁波が人体に及ぼす影響についても調査を進めており、来年にも調査結果をまとめて発表する。

どうなんでしょ。


確かに疫学的には0.4マイクロテスラを越えた辺りから影響が見られるという報告が出るようである。ただ、冒頭に述べたように異議も多い。その状況において、『関連が否定できない』というレベルでの対応なんだろうか、これ。基準となる値次第では『予防原則』の過剰適用となりかねない気もするのだが。


はじめに見出しを見たときは、携帯電話などの高周波電磁波を、身体の至近で使用するはなしかと勘違いし、実際それならば納得なのだが、そちらは来年だそうだ。こっちを先にすべき話じゃあないのかい?


いずれにせよ、これに対して何をどのように述べているのかは実際の指針を見ないとわからないのかもしれないと思って待っていたが、日本時間19日昼になってもまだWHOのトップページにその情報が出てこない。

*1:結果に影響を与える、着目している元とは独立した因子。例:喫煙と癌との関係に対する社会経済指標。