煙草は大人の趣味なんだろう？
煙草を恒常的に吸う人にはそこまでの認識がないのだろうが、煙草は臭いのだ。煙草を吸った直後の喫煙者が側を通っただけで、頭の血管がきゅっと収縮する気がして軽く頭痛がする程度のものを発散しているのだ。だから、密閉された車内に煙草を吸う者が一人出ただけで、その車内全体が、あまり短いとも言い難い間、臭いものとなる。極端な話すぐ消せばよいってものでもないのだ。吸われれば、それでそれまでの空間は破壊されてしまう。だから、そういった者に対して、きちんと「小便はトイレでしろ」と言える状況の方が望ましい。
すなわちそういった行動が生じやすい施設には、分煙設備が整備されていた方が非喫煙者にとっても望ましいのだ。*1
かつては非喫煙者が、分煙が進まぬことに悩まされてきた。その理由は簡単、分煙にはコストがかかるからだ。だから長らく、一つの部屋の中に非喫煙席のエリアを設け、至近煙を避けられることだけをもって分煙とされてきたのだ。それを不満に思った非喫煙者がそのような施設を避けることによって失われる利益が、きちんとした分煙設備を設けるコストを下回る限り、分煙施設が導入されるはずがない。そして実際そうだった。
今ようやくその状況が徐々に逆転するケースが出始めた。
そしてそのような場合に、吸えないことを不満に思う喫煙者がそのような施設を避けることによって失われる利益が、きちんとした分煙設備を設けるコストを下回る限りにおいて、やはり管理者が分煙施設の導入ではなく、原則禁煙を選択してしまうのは、全く同じ構図である。
しかし非喫煙者とは原理的には非購買者であり、それが資本の論理に及ぼす力は、喫煙にまつわるものを避けると言うネガティブな形でしか発揮できなかった。だが、喫煙者は違うはずだ。喫煙と言うアクティブな行動をとる「集団」であり、特に日本の場合はその供給元がJTという巨大企業に集約されている。状況改善のために、かつての非喫煙者に比べればはるかに主体的な行動が可能なはずではないのか。数の方だってまだまだ巨大な支持人口をもっているのだし。
そのような状況を考えるなら、「大人の趣味」を守るための「大人の行動」は、何も対価を示すことすらせず、ただひたすら吸わせろと苦情を言って回ることではなく、自らコストを負担して、安心して吸える場所を主体的に確保して回ることであろう。
何がいいたいかと言えば、せめてJTに対して、煙草の値段を○○円上げてよいから、それを財源として全国の主要な施設にきちんとした喫煙設備を設けるよう働きかける行動くらいしろよ、ということである。言い換えれば、非喫煙者の財布を頼らず、自分たちで喫煙所を賄え。寡聞にしてそのような活動が活発に行われているとは知らない*2。
目に入りやすい言論は、煙草の値段を上げたと言っては腹を立て*3、吸える場所が減ったと言っては吸わせろと訴訟を起こし、煙草のみが不当に差別されていると騒ぐものばかり。挙げ句にはファシズムだなんだと自らを棚に上げた被害者意識丸出しのレッテル貼り。そんな「子供」な行動で周囲の支持が得られるはずもなかろう。本当に喫煙習慣を守りたいという危機感が足りないのではないか。
煙草は大人の趣味なんだろう？
*1:こういうことを言うと、コメント欄でご教示いただいたような「分煙施設で益があるのは非喫煙者だから、施設設置費用は非喫煙者が持つべきだ」なんて勘違い発言を招いちゃうのだろうか。本当に大人の趣味であれば不要なはずなのに、かならず一定のDQNはいるから、そういうDQNはDQN行動以前に隔離できるようにしておいたほうが有益だろうといっているだけなんだけどね。んで、その同じ「趣味」全体が白眼視を受けて将来的に不利益を受けることが無いように、その隔離の費用は同好の士で賄えと続けているつもりなんだが。そういう勘違いのタネに使われちゃったような場合には、「同情するだけバカを見る」ことが明らかになったとして、私も「無煙社会をめざす運動」派もしくは「禁煙ファシズム」派に転向しようかな。
*2:JTのサイトを見ると街角に喫煙所を作った云々というページはあるが、写真で見る限りでは、往々にして、単に街角に灰皿を置いてすませているように見える。吸い殻をまき散らさねば良いというものではない。
一方で、これをよしと思ってしまうところが現状を物語っている。通勤を急ぎながら歩き煙草をし、それをろくに消さず／全く消そうともせず投げ捨ていてく馬鹿者がどれほどいるか。こんな現状の何を支持しろというのか。
で、これについても吸える場所が減ったからそのような行動が増えたという論者がいるかもしれない。しかし、統計的なものではないが、体感的にはそれでも昔…例えば20年前に比べて…格段に減っていると思う。
非喫煙者にしてみれば、そんなものは依存症のいいわけだ。半日程度の我慢もできぬものが「大人の趣味」の行動のはずがない。
*3:先進国の平均からすれば半分程度の価格であるにも関わらず、それを10円ばかり上げる程度の値上げで！！
