ちょっとだけ例示

(1)タバコの効用として挙げている例中に、「痴呆症の予防になる可能性大」(p25)としている部分がある。

嫌煙運動の勢いに負けて最近では聞かれなくなった

としているがちょっと待って欲しい。


2000年に英国Sir Richard Dollらによって、British Medical Journalにすでにこのような論文が出ているではないか。

BMJ. 2000 Apr 22;320(7242):1097-102."Smoking and dementia in male British doctors: prospective study." Doll R, Peto R, Boreham J, Sutherland I.

内容は、Tsubono Reportの「喫煙で、痴呆のリスクは下がらない」参照。なんでこういうきちんとした報告を無視して、嫌煙運動によって作り出された雰囲気であるかのように矮小化する?



(2)で、そもそもこの効用、「タバコは百害あって一利なし」という主張に対抗して書いている(p16〜)のだが、どうも頓珍漢。リストとしてあげてみれば、

  • 覚醒作用
  • リラックス作用
  • 発想の転換を促す
  • 気付け作用
  • 痴呆症の予防になる可能性大
  • 喫煙所は自由人たちの社交場

「百害」として想定している健康リスク(がんとか血管系疾患とか?の寿命に影響を与える疾患)とはあさっての方向に着目した主張であることは一目瞭然であろう。



(3)あと、この人に限らずこの手の人たち、どうも「平山データ」を挙げてそれを否定してるのが目立つんだが、なんで世界的レベルの先駆者であるSir Richard Dollを無視する?



(4)んでもって、(p.33-34)

平山雄という研究者は(略)発表のほとんどは学会やシンポジウムである。その発表の直前には、マスコミを呼んで前もって発表内容を伝えている。発表の当日にすでにテレビや新聞などで紹介されていたのでは、あたかも研究の評価が定まったかのように錯覚し、発表会場で疑問点や問題点を指摘できなくなる。このようなやり方は明らかにルール違反だし、(以下略)

別にルール違反でも何でもないんじゃないのかなあ。普通にやられていないかい?知っている限りでも、たとえば大きいところでは、チェルノブイリ疫学調査の発表においても、会議の前にPress Releaseがあったはずだよ。んでもって、だからって「発表会場で疑問点や問題点を指摘できなくなる」ってほうが錯覚じゃないの?みんな報道に接した分、問題があると感じれば、ますます指摘に回って、質疑応答が延々伸びちゃったりするぞ、普通。ついでに疫学は金と時間がかかるから、論文より学会などの発表が多くなるのはしょうがないんじゃないかなあ。まあ実態を知らないので、非難されるべき状態であるのか、そうではないのかまではわからないけど。


とりあえず読んだ所まで。