フランスでは「定年退職者」は、れっきとした肩書きである


まままのまさんの2004/01/30 (金)の記事より。長い引用の長い引用(見た目をはてな形式の引用に変更)。

労働問題の延長上にある定年退職があるが、この問題について、『大国フランスの不思議』(山口昌子/角川書店)が書いていることが興味深いので、少し長くなるが、引用してみよう。

フランスでは「定年退職者」は、れっきとした肩書きである。日本では定年退職すれば、「無職」となり、このいかにも「用なし」的な呼称によって、レゾン・デートル(存在理由)まで喪失したような気分を押し付けられる。しかし、フランス人が「定年退職者」を名乗るとき、そこには「お国のため、わが愛する祖国フランスのため長年、奉仕してきた」という一種の誇りと、長年、働いた末に得た肩書きといった自負が感じられる。


 この「お国のために働く」という意識は、官庁に職を得ようが民間社会で働こうが同じだ。中略。この意識はまた、官庁、民間会社を問わず、定年退職者の年金が国家単位の社会保障制度によって賄われ、定年後は決して豊かではないが経済的にそれほど不安がない、という制度的なものも影響しているかもしれない。中略。


 日本とフランスでは国家と国民の関係が違うということだろうか。フランスでは、国家は常に国民に対して責任を負っている。そう考えると、日本に「定年退職者」の肩書きが存在しないことと、日本に日本国民である「身分証明書」がないことは、同じ認識線上にあるのかもしれないと思えてくる。日本国民が後生大事に抱えているのは、会社や役所の名刺である。パスポートを取得しなければ、日本では日本国民であることを証明するものは何もない。

そういや英国でも、職業欄に「retired」とかあった気がする。特段気にしたこともなかったが、こういう風に言われると、なんかすごいことのように思える。簡単なことだけど、こういう小さなことの積み重ねが、トータルとして老人を大事にする風潮になっているのかもな。