カラスの知能

12月10日付けのScience(Vol. 306, pp. 1903-1907)に興味深い総説が出ていた。
「The Mentality of Crows: Convergent Evolution of Intelligence in Corvids and Apes」
というものだ。

まだ読みかけであるが簡単に紹介すると、知能が高い動物としては霊長類以外にクジラ類とカラス類*1が知られていたが、カラスの知能を調べてみたらかなり賢そうだぞ、という話(はしょり過ぎ(^^;)。

ちなみにカラスの脳の、体との相対比は、チンパンジー並の大きさを誇るとか。そして、前頭葉が発達しているのだとか。ただその発生学的起源は霊長類とは異なるらしい。鳥と哺乳類とでは系統がそれなりに離れてて、前頭葉が進化する以前に分岐しているのだから、詳細が異なるのはむしろ納得だが、同様に前頭葉部分が発達するってのは面白いね。

とはいえ、プロセッサの能力はある程度はチップの複雑さに依存するだろうと思っていたので、いくら相対比が大きくてもある程度の絶対値が必要かと思っていた。だから、カラス程度のちっこい脳みそで、そこまでの能力を発揮できるってのはなかなか驚きであった。

知能に限らず寿命の点でもなんか違う気がするんだよね。

私の認識不足があれば指摘してほしいが、体制の似た動物間では、寿命というのは概ね体重と相関する*2。ほ乳類の間では、マウス(30〜40g)で約2年、ラット(300〜500g)で2〜3.5年(最長4年)、ウサギ(2〜5kg)で5〜6年以上、犬や猫で10〜20年程度である。人間サイズ(60kgくらい?)になるとようやく80〜120年ほども生きられるようになる。

カラスの寿命は知らないが、知能的にカラスにも匹敵する可能性を持つオウム類について挙げてみると、飼育下の最長記録*3セキセイインコ程度(30g)のものでも15年、ラット程度の大きさ(150g程度)の種類で15〜30年、ヨウム(400〜500g)やコンゴウインコ(1kg超)では、50年以上(80年という記録もある)という人間に迫る寿命を持つ。その体重から考えると異常に長寿なのだ*4

ちなみにゾウガメなども寿命は長いが、彼らは実にゆっくりした人生を送っている変温動物。鳥さんは、この記事にあるような高い知能を誇る恒温動物なのである。

なぜかという理由は知らないが。ともあれ、さすが由緒正しい恐竜の末裔である。ぽっと出の哺乳類なんかとは格が違うのであろう(笑)。

(13/Dec/2004登録/同時登録14, 15, 16/Nov/2004)

*1:鳥類の中でダントツという一方で、いくつかのオウムは例外と言う念押しが何度も出て来る。実際オウムの一種であるヨウムでは、教えた言葉を単に「おうむ返し」にするだけではなく、飼い主の我が子びいきを割り引いても、その意味を把握して自分で組み合わせて使っているとしか思えない会話例がいくつも報告されている。

*2:ただし同種の場合は体が小さい方が寿命が長いのだそうだ。小型犬と大型犬を考えてもらえば分かると思うが、他にも馬や人で報告されているとか。http://www.tmig.or.jp/jsbg/yousi5.htm

*3:これまで生態などの知識が乏しく、飼育技術があまり進んでいなかったため、飼育下の平均ではさほど長くない。セキセイインコで6年、ヨウムコンゴウインコでも15年など。それでも体重比較では大したものなのだが。

*4:だから鳥さんを飼うときは生涯面倒を見なければならない可能性もあるので、それなりの覚悟が必要なのだ。どうせ飼育下ではすぐ死ぬよ、等と憎まれ口をたたく向きもないではないが、私も長寿の実例を見ているだけに、そうそうレアケースとも思えない。ちなみにそちらのお宅は、私が小学生くらいのときには既にいて、その体の大きさにビビった記憶がある。そして先日お邪魔したときにまだいたので、鳥さんを代替わりしつつ飼っているのかと思って聞いてみたら、小学生の時に会っていた子と同じ子だった。少なくとも30年は元気で生きているのだ。