喫煙率と肺がん死亡

たばこについて触れたついでに、自分のブックマークからピックアップ。
煙草の健康影響についていろいろな意見があるのはいいのだけれど、もうちょっとちゃんと調べて話そうよ、という話。


電波の飛び具合がある意味楽しい掲示板にある「81272 ガン死亡率が増えているのはタバコが原因? 」というエントリを典型的事例として用いてみよう。以下に関係する部分を引用:

まず、ガンとタバコの基礎事実から見ていきたいと思います。

(略)

では、そのガン死亡の年代推移を見ていきますと、
1910年 32,998人
1940年 51,879人(1910年比約1.6倍)
1950年 64,428人(1910年比約1.9倍)
1960年 93,773人(1910年比約2.8倍)
1970年119,977人(1910年比約3.6倍)
1980年161,764人(1910年比約4.9倍)
1990年217,413人(1910年比約6.6倍)
2001年300,658人(1910年比約9.1倍)リンク
⇒このデータ―から、特に1980年頃からガン発生率が上昇していると読み取れます。

んーと、いいたいことはあるけど、後述。もう少し先まで読む。

では、タバコの状況どうでしょう?
下記は日本における年齢別に見た喫煙率です。

                                                                                                                      • -

[ 昭和63年 ]
・男性
20歳代:63.2% 30歳代:63.6% 40歳代:58.1% 50歳代:55.4%
・女性
20歳代:10.6% 30歳代:11.5% 40歳代:9.3% 50歳代:7.4%
[ 平成12年 ]
・男性
20歳代:60.8% 30歳代:56.6% 40歳代:55.1% 50歳代:54.1%
・女性
20歳代:20.9% 30歳代:18.8% 40歳代:13.6% 50歳代:10.4%
厚生労働省:国民栄養調査結果)
⇒喫煙率は、男性は年々下がり、女性は増えている。しかし、喫煙総数としてみれば減少している。


上記の基礎データ―からみても、喫煙推移とガン死亡推移との連関はどうも見つけられません。

残念。がん死亡について、年齢調整死亡率を見てないでしょう?だから単調増加するように見える。なんつったって、戦後の日本は平均年齢の上昇が著しいからね。


そのあたりの実際の推移がよく見える資料として、日本における最大の当事者であろう日本たばこ産業 JTが2006年3月2日付で発表しているらしい「たばこ対策に関する日本たばこ産業株式会社の考え方等」(注意:PDFファイル)をご紹介しよう。
その13ページの図を下記に引用。図のタイトルは「(資料8) 肺がん死亡率と喫煙者率の推移(1)(男性)」 *1となっている。これを見れば、年齢調整死亡率でみると、肺がんは1990年代半ばをピークに、すなわち喫煙率の推移と約30年遅れで減少傾向に転じていることがわかるだろう。

ということで、当のJTが使用している資料から、そのあたりは十分読み取れるのであった。*2


そういうわけで、

タバコを悪玉にしている根拠は何なんだろう?


そもそもタバコは紀元後間もないマヤ文明から吸われている史実もあります。日本人も、古くからタバコを吸っており、昭和だけ取り上げても、喫煙率に大きな変化がないにもかかわらず、ガン死亡率が9倍にも跳ね上がっています。その原因が工業化(つまりは人口物質)にあることは、明らかではないでしょうか。

与太を飛ばす前にもうちょっと調べようよ*3

*1:「(出典) 粗死亡率、年齢調整死亡率:厚生労働省人口動態統計喫煙者率:外部委託調査(1949年〜1964年)、JT全国喫煙者率調査(1965年〜)」

*2:日本の事例に限って言えば、公害としての大気汚染やフォールアウトなんかも、そのあたりがピークだったりするかもしれない。しかし、同様の疫学の他国での結果と比較すれば、煙草に起因するものと考えたほうが素直な解釈といえるのではないかと思う。また、同掲示板で自動車の数とパラレルだと主張する記事もあるのだが、それだと潜伏期間が得られないかもしれないという気もする(ここは未検証)。潜伏期間を30年ととるならば1965年、20年ならば1975年ごろを境に大気汚染等に関して下向きになるような事例が存在すべきなんだが。

*3:そういえば何が「与太」か書いてなかったので若干補足。「日本人も、古くからタバコを吸って」いると主張しているけど、問題となっている紙巻たばこ(cigarette)が我が国で初めて発売されたのは1883年だそうですから(ソースは「タバコ有害論に異議あり!」p137)。

受動喫煙に関連して

「受動喫煙の害」を否定するJT・財務省・知識人に対する日本禁煙学会からの緊急声明 日本禁煙学会

受動喫煙の害に関する日本禁煙学会の記者会見 日本禁煙学会

  • 週刊ポスト(11月17日号)において受動喫煙の有害性を否定した特集記事が掲載されたことへに対する緊急記者会見。
  • 『たった1件の研究結果だけで、関連の存在が否定されたり肯定されたりする浅薄なものではありません。』
  • 受動喫煙非喫煙者に肺ガンを起こすという知見は、多面的な証拠を総合して導き出された結論』
  • 『今年6月に出された米公衆衛生長官報告でも2100編を超える一流の論文を精緻に組み合わせた(以下略)』

1.能動喫煙と肺ガンの確固たる関連、
2.喫煙量には無発ガン閾値はないこと、
3.主流煙と質的に同じ発ガン物質が副流煙にも含まれていること、
4.生体マーカーの測定により発ガン成分が非喫煙者に侵入していることの証明、
5.環境タバコ煙がDNA損傷をもたらすこと、
6.動物において発ガン実験が成功していること、
7.疫学的関連の諸条件(成績の一致性・特異性・最高度曝露群での関連の存在・量反応関係など)が満たされていること、
などを総合的に評価した証拠の重み解析で、受動喫煙と肺ガンが確実な関連を持つと判断されるに至っております。
 以上を根拠として米EPAは、「環境タバコ煙」(受動喫煙)をヒトに対する発ガン性が証明されたA群発ガン物質(group A carcinogen)と認定しました。A群発ガン物質には、ベンゼンアスベストラドンなど十数種類の物質が含まれますが、一般の社会生活レベルの曝露でガンのリスクが明らかに増加することが証明された発ガン物質は「環境タバコ煙」以外にありません。

  • 「平山」論文だけを非難して悦に入っていたり、エンストローム論文だけでホクホクしていては埒が明かんというのがよくわかる話。


受動喫煙と肺ガンに関する最近の知見−WHOが間接喫煙のリスクを否定したという誤報を正す−松崎道幸 日本禁煙学会

  • 日本禁煙学会理事松崎道幸が1998年2月26日付けで書いた論文